室町時代はそれまで以上に農業の技術や農具が発展し、それによって農業全体が発展していった時代です。
その農業を発展させた中でも、農具の発達は目覚ましいものがありました。
どんなものが使われるようになったのか、その様子がわかる絵巻物とともに紹介します。
どんなふうに発達した?室町時代の農業
室町時代に発展を遂げた農業ですが、その発展の重要なところは、民衆の生活と結びついて土地の生産性を向上させる集約化、多角化がなされたこと、そして灌漑や排水施設の整備、改善が行われた事だといえます。
室町時代に灌漑、排水設備が整ったことで畿内では三毛作が行われるようになるなど、多くの変化がもたらされたのです。
そのように農業が活発になっていく中で、使われる農具などもまた変化を遂げていきます。
こんなものが発展、進化していった
室町時代まで、作物を育てるために使われていた肥料は刈敷、草木灰が中心でしたが、室町時代になると下肥も一般的に使われるようになっていきます。
こうして下肥が農作物を育てるために肥料として使われることは、その土地自体の地味向上そして育てた農作物の収穫の安定化につながっていきました。
さらに、それまでにはなかった様々な施設や農具も室町時代に誕生、発展していきます。
例えば、水流を利用して回転させ、自動的に水をくみ上げることができる水車が発展していったのもこの室町時代の事。
その他にもなげつるべや竜骨車など、用水施設に関する農具や設備も室町時代にどんどん発展していき、農業に関する作業はそれらが誕生、発展する室町時代以前に比べてだいぶ楽になったのです。
もちろん、用水施設に関係するものだけが発展したわけではありません。
畑を耕すものとして、牛や馬を使って畑を耕す牛馬耕も一般的に広まっていきました。
室町時代以前にも行われていた牛馬耕ですが、広く各地に伝わっていったのは室町時代の頃のこと。
東日本では馬が、西日本では牛を使って畑を耕すことが多かったようです。
絵巻物にも描かれるその様子
室町時代の農業の発展に合わせて誕生、発展していった農具や施設は絵巻物にも描かれていて、現在でも当時の様子をうかがうことができます。
例えば、今回紹介した施設や農具も様々な絵巻物に描かれているのです。
室町時代に肥料として一般的に広まっていった下肥を撒く人の姿は『洛中洛外図屏風』に描かれています。
また、当時の水車の様子は『石山寺縁起絵巻』に、『てほうかさね耕作絵巻』にはなげつるべが使われている様子を見てとることができます。
そして同じく室町時代に広まった牛馬耕ですが、その様子は『六道絵 畜生道』に描かれているのです。
室町時代に誕生、または発展していった農業関係の道具や施設の様子はこれほどたくさん描かれ、残されています。
それらは、室町時代にどれだけ農業が発展していったのかがわかる貴重な資料として、当時の様子を今に伝えているのです。