現代でもよく知られている日本の伝統文化。
そのうちいくつかの文化は室町時代に花開いた文化です。
その室町時代に大成した文化のうち、広く民衆に親しまれた民衆文化をいくつか見てみましょう。
皮肉を楽しめ!狂言の流行
室町時代に大成した文化のうち、現代でも親しまれているもののひとつである狂言。
いわずとしれた、日本の伝統芸能の一つです。
この狂言、能と同じく、室町時代に大成した民衆文化の一つなのです。
狂言はセリフ中心の喜劇。
それだけではなく、実は風刺性の強いものだとはご存知でしたか?
狂言はもともと能の幕間に演じられるもので、庶民の言葉を用いて支配階級に対する強い風刺をきかせた民衆文化でした。
皮肉を楽しむ狂言、それはまさに民衆のための文化。
題材も民衆の生活という身近なものだったので、広く愛好されたのです。
批判もユーモアで!
室町時代、支配階級を風刺した内容で人気だった狂言。
同じように、政治に対する風刺などを文書にして、人目のある場所に匿名で掲示・配布されるものを落書と言います。
室町時代以前から流行っていた文化の一つです。
その落書のなかで、代表的なものが室町時代にあります。
それが、「二条河原の落書」といわれるものです。
二条河原に掲げられたとされている落書で、室町時代に流行した連歌などの文化やその時代の社会などを批判する内容となっています。
匿名で書かれ、掲示された文書なので、どんな階級・立場の人物が書いたのかはわかりませんが、毒のある社会批判などをユーモアでくるみ、世間に発表することで笑いにかえるというところでは、そのころ民衆に愛好された狂言と共通する点があります。
騒ぐのは楽しいからだけじゃない?
また、現代の夏まつりなどでおなじみの盆踊りも室町時代から盛んになった民衆文化です。
現代の盆踊りの起源は、風流と念仏踊りが結びついたもの、という説があります。
正月や盆などに、華やかな姿をした人々が踊るものが風流。
念仏踊は念仏を唱えながら踊るもので、その二つが結びついて今の民衆文化の一つ、盆踊りになっていったという説があるのです。
念仏踊りはその名前からもわかるように、どちらかというと宗教色の強い踊り、行事でした。
もともとは死者の供養のために念仏を唱え、踊っていた念仏踊り。
それが室町時代になって農村の地域的な結合が強まったことにより、住民総出で楽しむことのできるように変化したのです。
今ではその由来を知らずとも、ただみんなと一体になって踊るのを楽しむことのできる盆踊り。
いろんな人と一緒に楽しめる盆踊りや社会に対する批判をユーモアにくるんで笑い飛ばす狂言や落書。
室町時代の民衆文化はたくましく、生き生きと生活している民衆の姿が浮かび上がってくるものが多いのです。